特集!別居と離婚
別居と離婚の大切な関係
別居とは、離婚しないまま、夫婦それぞれが別々の家で生活している状況です。
通常は離婚を視野にいれている場合に使い、夫婦関係が円満な状況で夫が単身赴任をしている場合は、別居とはいわないことが多いようです。
別居が、離婚にまつわる法律問題としてあらわれるのは次の場合です。
- 離婚を求める場面
- 別居状態の夫婦の問題
離婚原因(離婚できるかどうか)という観点から、別居期間の長さが問題となります。
婚姻費用(別居中の生活費)と子どもとの面会交流が問題となります。
別居と離婚について、離婚部門主任弁護士 野口真寿実が徹底解説します。
【別居と離婚原因】別居していれば離婚できる?
離婚原因というのは、裁判によって離婚が認められる条件です。離婚原因があれば、相手が離婚を拒んでも、裁判所の判決によって離婚をすることができます。
不貞や暴力等がなく、離婚を求める理由が性格の不一致だけという場合、離婚原因は認められないことが多いです。この点、裁判所は別居期間の長さに注目しており、長期間別居している場合には、夫婦関係が破綻している=離婚原因がある、という判断に傾き、離婚が認められやすいといえるでしょう。
長期間がどの程度かというと、目安は5年と言われています。ただ、この5年という期間は法律に規定があるわけでも、しっかりした判例で決まっているわけでもありません。個別の事情と、裁判官の個々の感覚によって、より短くなることもあれば、逆に5年あっても認められないこともあります。このような事案での離婚訴訟の経験が豊富な弁護士に相談してみると、具体的な場合の見通しはより明らかになることが多いです。
なお、非がある側が離婚請求する場合、たとえば浮気した夫が離婚を求めているが、妻が離婚を拒否している場合は、夫は有責配偶者ということになります。有責配偶者の場合は、事情が違ってきます。
有責配偶者の場合は、10年程度の別居期間と別居中の誠意をもった対応が必要なことが多いです。ただし、この場合も具体的な事情や裁判官の個々の感覚によって結論が異なります。別居期間が10年より短くても具体的な事情によっては離婚が認められることもありますし、10年の別居期間でも認められない場合もありえます。
いずれにしろ、相手が離婚に応じてこない場合、より早期に離婚するにはどのような方法がよいのか、逆に相手と別居している状況で、できるだけ離婚しないですむにはどのような方法がよいのかは、相手の性格やそれぞれの経済事情、子どもの状況等、様々な条件によって異なります。
【別居と婚姻費用】別居してからの生活費は?
別居した場合、通常は婚姻費用の問題が発生します。婚姻費用は、夫が妻に払うケースが多いですが、妻の収入や、夫が子と同居している等の事情によっては、夫から妻に請求することもありえます。
婚姻費用の額を決めるにあたって、裁判所ではいわゆる「婚姻費用の算定表」(※裁判所HPが開きます)が広く用いられています。
婚姻費用の額は、もらう側からすると少なすぎると感じることが多いですし、払う側からするとかなり苦しく感じることが多いです。ですから、別居する前に、別居したら経済的にどのような状況になるのかは考えておく必要があります。
もらう側であれば、その婚姻費用を前提に、
- 子どもと生活していくことができるのか
- 習い事は今までどおり継続できるのか
等を考える必要があります。場合によっては、生活保護も視野にいれなければならないかもしれません。
払う側であれば、今の収入から婚姻費用を支出して、
- 自分が生活できるのか
を検討する必要があります。
特に、住宅ローンを組んでいる場合、住宅ローンに加え、算定表上の婚姻費用を負担するとなると、経済的に破綻してしまう、ということになりかねません。
また、住宅ローン以外の借金の支払いや、勤め先によっては様々な名目での給料からの控除項目が多い場合、それらの支出は考慮されないことが多いので、しっかり検討しておく必要があります。
婚姻費用を決めるにあたって住宅ローンや私学の学費をどのように考慮すべきかについては、色々な考え方があります。当事務所でも、多数案件を扱っていますが、家庭裁判所と高等裁判所で結論が異なることも珍しくありません。裁判で婚姻費用を決める際には、主張を尽くし徹底的に頑張るとしても、事前準備としては、悪い結論が出た場合を考えておく必要があります。
なお、婚姻費用はまず夫婦の協議で決め、協議がまとまらなければ家庭裁判所の調停、調停もだめなら家庭裁判所の審判という流れがあり、家庭裁判所の審判に不服があれば高等裁判所に決めてもらうことができます。
別居と婚姻費用Q&Aへのリンク
【別居と子どもとの面会】別居しても子どもと会える?
夫婦が別居することにより、子どもと会うことが難しくなります。まずは、夫婦間でどのように子どもと会うか決めることになりますが、それが困難な場合、裁判所での調停や審判で面会交流を求めていくことになります。