その他の離婚理由

嫁姑問題、宗教問題、精神病、行方不明など、様々な離婚理由について解説します。

嫁姑問題

嫁姑問題においては、夫または妻だけでなく、舅、姑にも慰謝料請求ができる場合があります。

夫の両親と同居している場合で、離婚の際に妻に対して慰謝料の支払いが認められたケースがあります。姑が再三にわたって嫁を精神的に虐待し、夫もこれを抑制するどころかそれに同調して嫁を非難したという場合です。このような行為は「夫婦の生活を破壊に導いたとして不法行為の責任を免れない」とされ、夫と姑に慰謝料の請求が命じられました。

一方で、慰謝料請求が認められなかったケースもあります。夫婦間の関係には直接的な原因がないものかかわらず、舅、姑との関係が原因で家庭内に不和が生じたというものです。このケースでは、妻が不和を解消しようと努力していたにもかかわらず、夫は冷淡で非協力的な態度を取っていたとされ、夫には慰謝料の支払いが命じられましたが、舅、姑については「舅、姑との不和は世間一般から考えればよくあることで、いわば宿命のようなものであるため、いずれかにのみ責任があると言い切れるものではない」という判断で、慰謝料請求が認められませんでした。

このように、嫁姑問題は、各家庭により複雑で多種多様なケースが存在します。嫁姑問題で離婚や慰謝料請求をお考えの場合は、弁護士などの第三者に相談するのがよいでしょう。

宗教問題

信仰の自由は憲法で定められた権利ですので、夫または妻が自分と違う信仰を持っていること自体は離婚理由としては認められません。

ただ夫または妻が宗教活動に過度に専念し、家庭生活をかえりみず、それにより夫婦関係が破綻するようなことがあれば、それが婚姻を継続しがたい重大な理由に該当し、離婚理由として認められる可能性があります。

精神病

法定離婚事由のなかに、「回復の見込みのない強度の精神病」とありますが、実際には、病名だけで「回復の見込みがない」と判断はできません。

また、相手が精神病にかかってしまったからといって簡単に離婚を認めてしまうことは、人道的にも好ましいことではありませんし、離婚した相手がその後自分の力で社会生活を送ることは困難であるとされ、離婚原因として認められることはあまりありません。

相手に意思能力がない場合、協議離婚は無効とされてしまうため不可能です。また調停離婚も不可能です。裁判離婚をすることになるのですが、この場合まず成年後見人の申立てをして成年後見人を選任してもらい、その成年後見人を相手に離婚訴訟をすることになります。

行方不明

法定離婚事由のなかに、「3年以上の生死不明」とありますが、生死不明行方不明とは違います。「本人から直接連絡はないし、どこに住んでいるのかも分からないが、知人には連絡しているようだ」という場合は生死不明には含まれません。

相手が行方不明である場合、「3年以上の生死不明」は認められませんが、「悪意の遺棄」または「婚姻を継続しがたい重大な事由」という離婚理由を主張することができます。

生死不明については理由は問われません。自分から相手に対して「出て行け」と言って、相手が出て行ってしまい、そのまま生死不明となった場合でも理由として認められます。

相手の居所がわからない場合、協議離婚調停離婚も不可能ですので、裁判離婚をすることになります。裁判所に生死不明となった経緯や経過を説明します。

関連条文

民法第770条

(裁判上の離婚)
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき。
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  3. 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。