【弁護士に聞く!】「姑問題」「宗教」「子育てしない」…その他の離婚理由 Q&A
「浮気や暴力じゃない。でも、もう限界!」
「姑との関係が最悪…。これって離婚理由?」
「ワンオペ育児にもう耐えられない!」
「相手が失踪! どうすればいい?」
法定離婚事由について学んできたCさん。
最後は、「不貞」や「暴力」とは少し毛色の違う、家庭内のすれ違いや特殊なケースについてT弁護士に聞いてみました。
Bさん:
離婚理由は一つじゃないかも…と、あらゆる可能性を探っている。T弁護士:
法律のプロ。第三者が絡む問題や、特殊なケースの難しさを解説する。
Q1.「嫁姑問題」! これって離婚理由になりますか?
先生!相手というより、相手の親(舅・姑)ともう限界なんです! これ、離婚理由になりますか?
Cさん、来ましたね。非常に多く、そして根深い問題です。
まず、「嫁姑問題」それ自体は法定離婚事由ではありません。
え、ダメなんですか!?
しかし、その問題が原因で、相手との「婚姻を継続しがたい重大な事由」が生じた、と認められれば離婚理由になります。
ホッ…
重要なのは、その問題に対する「配偶者の態度」です。
Q2. 姑が原因なら、姑に「慰謝料」を請求できますか!?
離婚するとして、慰謝料は配偶者じゃなくて、原因を作った姑に請求したいです!
いい質問です。Cさん、それは「場合によります」。
場合?
実際に、夫と姑に慰謝料の支払いが命じられたケースがあります。それは、「姑が再三にわたって嫁を精神的に虐待し、夫もこれを抑えるどころか同調して嫁を非難した」という場合です。
夫も一緒になって攻撃していたパターンですね。
一方で、夫には慰謝料が認められたのに、舅・姑には認められなかったケースもあります。
そのケースでは、夫は不和の解消に「冷淡で非協力的」だった(夫の責任は認めた)ものの、舅・姑については「不和は世間一般から考えればよくあることで、いわば宿命のようなもの」だから、舅・姑だけに責任があるとは言えない、と判断されました。
しゅ、宿命…(苦笑)
はい。このように非常に複雑で、家庭ごとに事情が全く違うため、慰謝料請求をお考えなら、弁護士によく相談した方がいいですね。
Q3.「宗教」の違いは離婚理由になりますか?
もし、相手がものすごく熱心な信者で、私と「宗教」が違ったら?
まず、「信仰が違う」こと自体は、離婚理由として認められません。「信仰の自由」は憲法で定められた権利ですからね。
じゃあ、我慢するしかない?
いえ、問題はそこからです。もし相手が宗教活動に過度に専念し、家事や育児、仕事をかえりみず、それによって夫婦関係が破綻するようなことがあれば、話は別です。
その場合は「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当し、離婚理由として認められる可能性があります。
Q4. 相手が「子育てに協力してくれません」。離婚できますか?
あの、子どもがいるんですが…相手が全然、子育てに協力してくれないんです! こっちは一人でヘトヘトで…。いわゆる「ワンオペ育児」です!
それも「状況に応じて可能」です。
と言いますと?
「子育てに協力的でない」ということ自体が、すぐに法定離婚事由になるわけではありません。
しかし、相手のその非協力的な態度が原因で、夫婦関係が修復不可能なほどに悪化し、結婚生活が破綻してしまったと認められれば、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚が認められる場合があります。
「破綻した」という事実が大事なんですね。
はい。例えば、非協力的どころか育児を妨害するとか、Cさんが体調を崩しても一切かえりみないとか、そういう事情が積み重なって、もはや夫婦としてやっていけない、というレベルかどうかですね。
Q5. 相手が「重い精神病」にかかってしまったら…?
これは…すごく言いづらいんですが、もし相手が「重い精神病」になってしまったら…。
法定離婚事由には「回復の見込みのない強度の精神病」というものがあります。ただし、この条項は、令和8年5月ごろまでに施行される改正民法では削除されてます。
その上で、病気を理由に離婚できるかという点ですが、Cさん、これは非常にハードルが高いです。
なぜですか?
まず、病名だけで「回復の見込みがない」とは判断できません。
それに、裁判所は「病気になった相手を簡単に見捨てるような離婚は、人道的にも好ましいことではない」と考えます。離婚後の相手の生活が困難になることが明らかなので、これを理由とした離婚は、あまり認められません。
そうなんですね…。
もし、相手に意思能力(自分で判断する力)がなくなっている場合、協議離婚も調停離婚もできません。裁判離婚になるのですが、その場合、まず相手のために「成年後見人」を選任してもらい、その後見人を相手として離婚訴訟を起こす、という非常に複雑な手続きが必要になります。
Q6. 相手が「行方不明(失踪)」になりました! どうすれば?
先生! 相手が家を出て行ったきり、どこにいるか分かりません! 行方不明です!
落ち着いてください。まず、法定離婚事由には「3年以上の生死不明」というものがあります。
「生死不明」? 「行方不明」とは違うんですか?
全く違います! ここが重要です。
「生死不明」とは、生きているか死んでいるかも分からない状態のことです。
「行方不明」は、「本人の住所は分からないけど、知人には連絡してるみたい」とか「SNSは更新してる」という場合です。これは「生死不明」には含まれません。
あ、うちは「行方不明」かも…。じゃあ離婚できない?
いえ、大丈夫です。
「3年以上の生死不明」は使えませんが、その代わりに「悪意の遺棄(正当な理由なく一方的に失踪した)」または「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たる可能性があります。
Q7. 相手がいないのに、どうやって離婚手続きを?
そもそも、相手がいないのに、どうやって離婚するんですか? 話し合い(協議)も調停も無理ですよね?
その通りです。相手の居所が分からない場合、協議も調停も不可能です。
Cさんができるのは「裁判離婚(訴訟)」だけです。
裁判所に訴え出るんですね。
はい。裁判所に「生死不明(または悪意の遺棄)になった経緯」を説明して、訴訟を起こします。相手がいない裁判になりますが、手続きを進めることは可能です。
その離婚理由、弁護士にご相談ください
- 「嫁姑問題で、夫も姑も許せない」
- 「ワンオペ育児にもう耐えられない」
- 「相手が行方不明で、手続きができない」
これらの問題は、当事者同士での解決が非常に困難なケースです。
特に第三者が絡んだり、相手の所在が不明だったりする場合は、法的な手続きが複雑になります。
ご自身のケースが離婚理由として認められるのか、どう進めればよいのか、弁護士にご相談ください。
