調停離婚
調停離婚とは、家庭裁判所の離婚調停(正式には「夫婦関係調整調停(離婚)」)という話し合いの手続きを通じて離婚することです。話し合いによる離婚(協議離婚)がうまくいかなかった場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。
離婚調停は、相手が離婚そのものに応じない場合以外にも、
といった場合でも申立てをすることができます。特殊なケースを除いて、離婚訴訟(離婚裁判)の前には離婚調停をしなければなりません(調停前置主義)。離婚調停でも離婚の話し合いがうまくいかなかった場合は、離婚訴訟(離婚裁判)になる可能性が高くなります。
調停離婚の手続きと流れ
- 家庭裁判所に調停を申し立てる
- 家庭裁判所からの呼び出し
- 初回の調停
- 2回目以降の調停
- 調停の終了
- 成立
- 不調
- 取り下げ
- 調停成立の場合:離婚成立
- 離婚届提出
「相手方の住所地の家庭裁判所」または「夫婦が合意して決めた家庭裁判所」に、申立書、戸籍謄本などの必要書類を提出する。
必要書類の詳細はこちら
(※裁判所HPが開きます)
裁判所で第1回目の調停期日(日にち)が決められ、調停の相手方に調停期日呼出状が郵送される。
家事審判官(裁判官)1名と調停委員(2名)が、申立人と相手方の話し合いに加わり仲裁をする。当日は夫婦が顔を合わせずに済むよう、それぞれ別の待合室で待機し、交互に調停室に呼ばれて調停委員と話をする(例:申立人→相手方→申立人)。
調停は月1回くらいのペースで、何度か開かれる。
調停の終了方法には以下の3つがある。
調停による話し合いで双方が合意し、調停委員が離婚するのが妥当と認めた場合、調停が成立する
これ以上話し合いを続けても合意の見込みがないと裁判所が判断した場合、調停は不成立となる。裁判官が双方の意見をまとめ不調調書を作成する
申立人は、いつでも調停を取り下げることができる。裁判所へ取下書を提出する。相手方の同意や取り下げ理由は不要
裁判所によって調停調書が作成される。調停成立と同時に離婚も成立する。
調停成立後10日以内に調停調書謄本とともに離婚届を市区町村役場へ提出する。この場合、申立人だけで手続きができ、離婚届に相手方の署名・押印は必要ない。
「婚姻費用分担調停」「面会交流調停」とは?
離婚そのものについて話し合う「離婚調停(夫婦関係調整調停)」とあわせて、「婚姻費用分担調停」や「面会交流調停」が行われることがよくあります。
これらが別の手続きとなっているのは、生活費(婚姻費用)や子どもとの面会交流は、離婚が成立する前から取り決めておくべき重要な問題だからです。
婚姻費用分担調停
婚姻費用分担調停とは、離婚が成立するまでの生活費を求める調停です。多くの場合、別居している配偶者の一方(例:妻)が、もう一方(例:夫)に対して申し立てます。また、離婚調停は申立てずに、婚姻費用分担調停だけを申立てることも可能です。
婚姻費用の額は、「婚姻費用算定表」(※裁判所HPが開きます)によって決まることが通常ですが、住宅ローンや私立学校の学費など、個別の事情があると算定が複雑になり、話し合いがまとまらないことも少なくありません。
調停が不成立となった場合は、自動的に審判という手続きに移行し、裁判官が支払うべき金額を決定します。
面会交流調停
別居中の子どもと会うためのルール(頻度、場所、時間など)を決めるための調停です。通常、子どもと離れて暮らす親が、子どもと一緒に暮らす親に対して申し立てます。離婚を望んでいるわけではない場合には、夫婦関係調整調停は申立てずに、面会交流調停だけを申し立てることもあります。
こちらも話し合いがまとまらず調停が不成立となった場合は、婚姻費用分担調停と同様に裁判官が審判で判断します。
手続がばらばらになることも
多くの場合、離婚調停と婚姻費用分担調停と面会交流調停は、同じ日に行われます。
ただ、離婚調停が不調の場合、次の手続は「離婚訴訟」になりますが、婚姻費用分担調停と面会交流調停は「審判」になります。また、それぞれの調停が別個に決裂したり、継続したりします。
そのため、「離婚調停を続けながら、婚姻費用の件は審判になる」、「離婚訴訟をしながら、面会交流の調停を続ける」など、それぞれの手続きが別々に進行することも珍しくありません。
調停離婚のマメ知識
離婚調停にかかる期間と費用は?
離婚調停にかかる期間は、話し合いの内容によっても異なりますが、だいたい6ヶ月~1年程度です。また調停にかかる費用は以下のとおりです。
- 印紙代(1,200円)
- 書面郵送のための郵便切手(裁判所により異なる)
- 弁護士に依頼する場合は弁護士費用
調停の成立にもいろいろある
”調停が成立する=離婚”というわけではありません。話し合いの結果、夫婦にとってもっともふさわしいと思われる解決策が導き出されるのです。具体的には以下のとおりです。
- 離婚をする
- 離婚はせず夫婦関係を修復する
- 離婚はせず冷却期間をおくためにしばらく別居をする
- 将来離婚はする予定ではあるが、当面は離婚せず婚姻費用などを分担する
調停成立後、やっぱり内容に不服がある
一度調停が成立し、調停調書が作成されると、その内容に不服があっても原則として不服申立てはできません。調停調書は、裁判の判決と同じ強い効力を持ちます。
少しでも合意内容に疑問や不安がある場合は、その場で安易に同意せず、納得できるまで話し合うことが非常に重要です。
結論を裁判所にゆだねることができる
調停は話し合いでの合意を目指す手続きですが、例外的に、裁判官が判断を下す「審判」によって離婚が成立することがあります。これを審判離婚といいますが、非常に稀なケースです。審判が下されるのは、主に以下のような限定的な状況です。
- 離婚の条件のほとんどは合意できているが、ごく些細な点で意見が食い違い、不成立になりそうな場合
- 双方が調停案に合意はしているが、なんらかの事情により(病気等)どちらかが裁判所へ出頭できない場合
- 調停案に合意しない理由が感情的なものである場合
- 早急に結論を出した方がいいとみなされた場合(親権争い等)
個人出頭主義
調停は、当事者本人が裁判所に出頭するのが原則です(個人出頭主義)。
やむを得ない事情がある場合は、弁護士を代理人として出席させることができます。弁護士以外の親族などを代理人にするには、裁判所の許可(代理人許可申請)が必要です。
ただし、調停を成立させる重要な期日には、必ず本人が出頭しなければなりません。
調停前の仮の処分
調停の申立てから成立までの期間、相手方が財産を隠したり処分したりするのを防ぐために、調停委員から命じられる処分のことです。この処分は調停委員会の独断で命じられますが、調停前の仮の処分の申立書を提出して職権発動を促すことも可能です。
その他、調停離婚のQ&A
調停の呼び出し状が来ましたが、都合が悪い場合にはどうしたらいいですか?
調停離婚、裁判離婚の場合にも公正証書を作成したほうがいいですか?
調停が不調ということで終了しました。今後どうしたらいいですか?
調停離婚を弁護士に依頼した方がいいケース
- 調停申立書その他書類の書き方が分からない、または作成する時間がない
- 調停委員が相手の言い分ばかり聞いているように感じ、公平な進行を求めたい
- 自分の主張を冷静に、論理的に伝える自信がない
- 相手が弁護士を立ててきたため、自分一人では精神的に不利だと感じる
