【弁護士に聞く!】「性格の不一致」で離婚できますか?

「浮気や暴力じゃない。でも、もうムリ!」
「離婚理由で一番多い『性格の不一致』。これじゃダメなの?」
「裁判官に『そんなのどこの夫婦も同じ』って言われそう…」

Cさんの離婚理由、それは「浮気」や「暴力」といったハッキリしたものではなく、一番よく聞く「性格の不一致」。
これが法的にどこまで通用するのか、T弁護士に現実的なところを聞いてみました。

弁護士大倉りえ
この記事を監修した弁護士

弁護士 大倉りえ

大阪事務所所長。
10年以上の経験を活かし、話しやすい雰囲気で丁寧にお話を伺い、納得の解決へ導きます。

登場人物
  • Bさん Bさん:
    離婚理由No.1(?)の「性格の不一致」を武器に戦おうとしている。
  • 弁護士 T弁護士:
    法律のプロ。「性格の不一致」が、裁判でいかに無力か、そして「最強の武器」になるかを解説する。

Q1. 離婚理由で一番多い「性格の不一致」! これで離婚できますよね?

Cさん

先生!私の離婚理由は、「性格の不一致」です! 価値観が合わない! 生理的に受け付けない!これ、離婚原因として最も多く挙げられるって聞きました。

弁護士

Cさん、来ましたね。離婚理由の王道、「性格の不一致」。

Cさん

これで「調停」や「裁判」を戦えますよね?

弁護士

まず、「協議離婚」や「調停離婚」なら、理由はOKです。
あれらは「話し合い」ですから、理由が何であれ、お互いが「離婚します」と合意さえすれば、離婚は成立します。

Q2. じゃあ、裁判でも「性格の不一致」だけで戦えますか?

Cさん

よかった! …じゃなくて、問題は相手が合意しない場合です。調停もダメで、裁判(訴訟)になったら?
「性格の不一致」だけを理由に、裁判官は離婚を認めてくれますか?

弁護士

原則として、認められません

Cさん

ええー!? 一番多い理由なのに!?

弁護士

「離婚届に書く理由」として一番多いだけで、それが「法定離婚事由(裁判で強制的に離婚させる理由)」として認められるかは別問題なんです。

Cさん

なんでですか!

弁護士

裁判官も「性格が合わない? それはどこの夫婦も多かれ少なかれそうでしょ。」と、これだけを理由に離婚を認めることは、まずないんです。

Q3. じゃあ、どうすればいいんですか!?

Cさん

そんな…。じゃあ、性格が合わないのに、相手が「イヤだ」って言ったら一生我慢しろと!?

弁護士

いえ、そこで離婚実務(リアルの現場)で使われる、標準的な方法があります。

Cさん

(ゴクリ)

弁護士

それが、「性格の不一致 + 別居期間」の合わせ技です。

Q4. 「別居期間」がどれくらいあればいいんですか?

Cさん

別居! 夫婦が同居したまま「性格が合わない!」と訴えるのは難しいんですね。

弁護士

はい。「性格が合わなくて、もう相当期間別居していて、関係は完全に破綻しています」という事実(=客観的な証拠)があれば、裁判所も「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚を認めてくれるんです。

Cさん

その「相当期間」って、どれくらいですか? 1年とか?

弁護士

あくまで目安ですが、実務上はこう言われています。

  • 5年あれば: ほぼ大丈夫。
  • 3年~5年だと: 幼い子供の有無や同居期間など、他の事情にもよりますが、認められてもおかしくないライン。
  • 3年未満だと: 具体的な事情によりますので、弁護士に相談してみてください。

Q5. 3年…! そんなに待てません!

Cさん

さ、3年…! 長いです…。

弁護士

Cさん、ここがミソです。この「3年」というのは、別居を開始してから『判決が出るまで』の期間なんです。

Cさん

判決が出るまで?

弁護士

はい。離婚裁判の前には調停が必要ですよね? 調停や訴訟でトータル1年~1年半くらいかかることも多いです。ということは?

Cさん

あ! もしかして…。

弁護士

その通りです。例えば、別居して1年半くらい経った時点で調停を申し立てれば、手続きをしている間に「3年」のラインを越える、という計算が成り立ちます。

Q6. 「別居」って、そんなに強いカードなんですか?

Cさん

なるほど! 意外と早く動けるんですね。

弁護士

さらに言えば、相手(離婚を拒否する側)も、それが分かっているんです。

Cさん

どういうことですか?

弁護士

仮に今回の裁判で「別居期間がまだ短い」とCさんが負けたとします。でも、別居を続けていれば、時計の針は止まりませんよね?
Cさんが2回目の裁判を起こす頃には、別居期間は十分になり、今度はCさんが勝つ可能性が非常に高くなります。

Cさん

相手は、時間の問題で負けるのが分かってるんだ。

弁護士

はい。だから、離婚を拒否していた相手も、調停や訴訟の段階で「どうせ最後は離婚になるなら…」と、やむなく離婚に応じる(和解する)ことは珍しくありません。
結果として、「性格の不一致」がキッカケでも、「別居」という事実を武器にして、現実には離婚できることが多いんです。

Q7. 重要な注意点:有責配偶者の場合は?

Cさん

よーし!「性格の不一致」と「別居」の合わせ技ですね!

弁護士

ただし、Cさん。一つだけ重大な注意点があります。

Cさん

弁護士

この「性格の不一致」という主張、実は、ご自身が浮気(不貞)をしている側(=有責配偶者)が、本当の理由を隠して使うことも多いんです。

Cさん

あ…。

弁護士

もし、有責配偶者だった場合、先ほどお話しした『3年~5年』という別居期間では、裁判所は離婚を認めてくれません。もっと長期間の別居が必要になります。
この「別居」という武器が使えるのは、基本的に有責配偶者ではない側、あるいは双方に非がある場合だと、肝に銘じておいてください。

「性格の不一致」での離婚、ご相談ください

  • 「ただ『性格が合わない』だけじゃダメなのか…」
  • 「別居したいけど、何から準備すれば?」

「性格の不一致」は、それ自体が理由になるのではなく、「別居」という客観的な事実と組み合わさることで、力を持つようになります。
ご自身のケースで「別居」をどう進めるべきか、どれくらいの期間が必要そうか、離婚問題に詳しい弁護士が具体的な戦略を立てるお手伝いをします。

まずは離婚に詳しい弁護士にご相談ください。

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