暴力・DV・モラハラ

暴力は離婚原因になるでしょうか?相手が暴力をふるう場合、離婚することはできるでしょうか?

暴力は本来、身体的暴力を意味するものですが、最近は意味が広がってきています。ただ、離婚の法的手続きにおいては、身体的暴力とそれ以外の暴力的な行動の意味は全く違います。ここでは、その区別にしたがって説明します。

身体的暴力

身体的暴力は、多くの場合、離婚原因になります。

相手が継続的に暴力を振るう場合、仮に相手が離婚を拒否したとしても、裁判所で所定の手続きをとることにより離婚ができます。

ただ、身体的暴力を一度でもふるえば常に離婚原因になるわけではありません
お互いの喧嘩の中での1回だけの暴力、大昔の暴力といった場合、離婚原因とは認められないこともあります。

相手が暴力を否定することも珍しくはないため、写真をとっておく、医師の診断を受けておく等の証拠を残しておくことが大切です。

身体的暴力以外の暴力

言葉の暴力、精神的暴力といった行為だけで裁判所が離婚原因と認めることは多くはありません。

悪質性が高い場合のみ離婚原因と認めるという状況です。どの程度の精神的暴力があれば離婚原因といえるかは、離婚事件の経験豊富な弁護士に相談してみることをおすすめします。

離婚原因と認められないと離婚できないというわけではありません。多くの場合、別居をして、ある程度の別居期間をおいた上で手続をすれば、別居の実績によって離婚をすることができます。
5年程度の別居期間があれば概ね離婚できます。3年程度の別居期間でも、言葉の暴力等の程度等、諸々の事情によっては離婚が認められることも多いといえます。

さらに相手方は今回の裁判で離婚が否定されても、再度裁判を起こされた場合は離婚になってしまうことが多いため、裁判の過程で離婚に応ずることも多いのが現実です。

なお、言葉の暴力やモラルハラスメントを離婚原因として主張する方が実は浮気をしていたという場合もあります。この場合は、5年程度の別居期間では離婚できませんので注意が必要です。

モラルハラスメント(モラハラ)

モラルハラスメント(モラハラ)はマスコミ等がとりあげることにより知名度が増しており、離婚相談の中で、モラハラを受けていたという話も多くあります。
一般的には次の行為がモラルハラスメントとされているようです。

  1. 精神的虐待
  2. 日常的に罵る、無視する、蔑む、脅す、終始行動を監視するなど

  3. 経済的暴力
  4. 生活費を入れない、無計画に借金を繰り返す、買い物の指図をするなど

  5. 社会的隔離
  6. 親戚や友人から隔離しようとする、外出を妨害するなど

モラルハラスメントが離婚原因になるとは法律に明示されていませんので、モラルハラスメントと言えれば離婚できるということにはなりません。そのモラハラが婚姻を継続し難い重大な事由といえるかどうかという観点から考えることになります。

ドメスティックバイオレンス(DV)

ドメスティックバイオレンス(DV)とは、「夫あるいは妻から受ける家庭内暴力」のことです。具体的には以下のようなことがドメスティックバイオレンス(DV)にあたると言われています。

  1. 身体的虐待
  2. 精神的虐待
  3. 日常的に罵る、無視する、蔑む、脅す、終始行動を監視するなど

  4. 性的虐待
  5. 性交渉の強要、避妊をしない、異常な嫉妬など

  6. 経済的暴力
  7. 生活費を入れない、無計画に借金を繰り返す、買い物の指図をするなど

  8. 社会的隔離
  9. 親戚や友人から隔離しようとする、外出を妨害するなど

家庭内暴力で苦しむ人を救済するため、平成13年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(通称「ドメスティックバイオレンス法」「DV法」)が制定されました。この法律をうけて「配偶者暴力相談支援センター」が設立され、このセンターにおいて被害を受けた人の一時保護、心理的指導などをしてくれるようになりました。また被害を受けた人が生命や身体に重大な危害を受ける危険が大きい場合は裁判所に申立てすることで、相手に対し、以下のような「保護命令」をくだすことができます。

  1. 「接近禁止命令」
  2. 被害を受けた人へのつきまとい、住居や勤務先近くの徘徊を禁止する

  3. 「退去命令」
  4. 自宅から出て行くように命じる

慰謝料

相手の身体的暴力が原因で離婚せざるを得なくなったという場合、離婚が認められるだけではなく慰謝料も認められます。

また、精神的暴力やモラルハラスメントの程度が悪質で、それが原因で離婚せざるを得なかったということであれば、慰謝料が認められる可能性が高いです。

関連条文

民法第770条

(裁判上の離婚)
1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
(省略)
(省略)
(省略)
(省略)
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2項 (省略)