【弁護士に聞く!】「暴力・DV・モラハラ」で離婚できますか?
「相手が暴力をふるう…」
「『お前はバカだ』と罵られ続けるのが、もう限界」
「これって『DV』? 離婚できる?」
「浮気」や「浪費」だけでなく、Cさんにはもう一つ深刻な悩みが。
それは「暴力」の問題。身体的なものから、ジワジワと精神を追い詰めるものまで…
法的手続きではどう扱われるのか、T弁護士に聞いてみます。
Bさん:
相手の暴力的な言動に悩んでいるが、これが法的に通用するか不安。T弁護士:
法律のプロ。法的な「身体的暴力」と「精神的暴力」の決定的な違いを解説する。
Q1.「暴力」があれば、絶対に離婚できますか?
先生、もう我慢できません! 相手が暴力をふるうんです! これなら文句なしに離婚理由になりますよね!?
Cさん、落ち着いてください。まずお怪我はありませんか?
法的な手続きにおいて、「暴力」は非常に重要な問題です。ただし、ひとくちに「暴力」と言っても、
- 身体的暴力(殴る、蹴るなど)
- それ以外の暴力(言葉の暴力、精神的暴力など)
この2つは、法的な意味合いが全く違います。
え、違うんですか?
はい。まず「身体的暴力」ですが、これは多くの場合、法定離婚事由(婚姻を継続しがたい重大な事由)になります。相手が継続的に暴力を振るう場合、相手が離婚を拒否しても、裁判で離婚が認められる可能性は高いです。
Q2. ケンカで「1回だけ」殴られた場合はどうですか?
「継続的」じゃなきゃダメなんですか? 大昔だけど1回とか、お互いの大ゲンカの中で1回だけとか…。
それが難しいところで、「身体的暴力を一度でもふるえば常に離婚原因になる」というわけではないんです。
- お互いの喧嘩の中での1回だけの暴力
- 何年も前の、大昔の暴力
こういった場合、裁判官に「それだけでは、関係が破綻したとまでは言えない」と判断されてしまうこともあります。
そんな…。
だからこそ、もし暴力があったら「相手が暴力を否定する」ことも珍しくないので、証拠を残しておくことが非常に大切です。ケガの写真をとっておく、すぐに病院に行って医師の診断書をもらっておく、などですね。
Q3. 「言葉の暴力」や「精神的暴力」だけでは離婚できませんか?
…殴られたりはしないんです。でも、毎日「お前は価値がない」「誰のおかげで生活できてるんだ」とか…そういう「言葉の暴力」がひどくて…。
…それはいわゆる「モラルハラスメント(モラハラ)」ですね。
こういう「精神的暴力」だけを理由に、裁判で離婚を認めてもらうことは…?
正直に申し上げて、それだけで裁判所が離婚原因と認めることは多くありません。
やっぱり、殴られないとダメなんですか…。
そういうわけではありませんが、「悪質性が非常に高い」と認められない限り、それ単体では法定離婚事由として弱いんです。また、モラハラは立証が難しいという特徴もあります。どの程度の悪質性なら認められるかは、本当にケースバイケースなので、経験豊富な弁護士に相談してほしい部分です。
Q4. じゃあ、「モラハラ」で離婚したい人は、どうすればいいんですか?
悪質性の証明って難しそう…。じゃあ、モラハラを受けてる人は泣き寝入りですか?
いえ、諦めないでください。ここで、以前お話しした「別居」が効いてきます。
あ、「性格の不一致」の時と同じ!
その通りです。モラハラ単体で離婚原因と認められなくても、「モラハラがひどくて、耐えきれずに別居し、すでにある程度の期間が経過している」という別居の実績があれば、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚が認められるんです。
期間は、やっぱり3年~5年ですか?
はい。5年あれば概ね離婚できますし、3年程度でも、言葉の暴力の程度(悪質性)など、他の事情と合わせて離婚が認められることもあります。
相手も「次の裁判では負ける」と分かるので、裁判の途中で離婚に応じる(和解する)ことも多いですよ。
ただし、これも注意点があります。「モラハラだ!」と主張している側が、実は浮気(不貞)をしている(=有責配偶者)というケースもあります。その場合は、5年程度の別居期間では離婚は認められません。
Q5. 「DV」という言葉も聞きますが、「モラハラ」と違うんですか?
よく「DV(ドメスティックバイオレンス)」とも言いますよね。あれとは違うんですか?
「DV」は、一般的に「家庭内暴力」全体を指す言葉で、非常に広い意味で使われます。
「DV法(配偶者暴力防止法)」という法律では、DVを
- 身体的虐待(殴る蹴る)
- 精神的虐待(罵る、無視する、監視する=モラハラです)
- 性的虐待(性交渉の強要など)
- 経済的暴力(生活費を入れない、借金を繰り返す)
- 社会的隔離(友人から隔離しようとする)
などと、幅広く定義しています。
じゃあ、私が受けてる「モラハラ」も「DV」の一種なんですね。
そういうことになります。もし、Cさんの生命や身体に重大な危害が及ぶ危険が大きい場合は、裁判所に申し立てて、「保護命令」を出してもらうことも可能です。
保護命令?
相手に「つきまとい禁止(接近禁止命令)」や「家から出て行け(退去命令)」と命じる、非常に強力なものです。
Q6. 暴力やモラハラで「慰謝料」は取れますか?
もし、これらが原因で離婚できるなら、慰謝料も請求したいです!
はい。
まず、身体的暴力が原因で離婚せざるを得なくなった場合、離婚が認められるだけでなく、慰謝料も認められます。
モラハラの場合は?
精神的暴力やモラハラも、その程度が「悪質」で、それが原因で離婚に至ったと認められれば、慰謝料が認められる可能性が高いです。証拠(録音など)があるかが重要になりますね。
暴力・DV・モラハラでお悩みですか?
- 「この言動は、モラハラとして認められる?」
- 「殴られた証拠(診断書)がある」
- 「今すぐ相手から逃げたい(保護命令)」
暴力やDV、モラハラの問題は、法的な証拠集めと、ご自身の安全確保の両方が必要です。
身体的暴力はもちろん、精神的暴力も「婚姻を継続しがたい重大な事由」となり得ます。
一人で悩まず、身の安全を確保した上で、すぐに弁護士や専門機関(配偶者暴力相談支援センター、警察など)にご相談ください。
