【弁護士に聞く!】養育費って何?いくら?養育費Q&A

「離婚したら、子どものためのお金は…」
「養育費って、どうやって決めるの?」
「私立や大学の費用は? 再婚したらどうなる?」

親権の問題とセットで考えなければならない、大事な「お金」の問題。
離婚後の子どもの生活を守る「養育費」について、CさんがT弁護士に、その相場やルールを詳しく聞いてみます。

弁護士大倉りえ
この記事を監修した弁護士

弁護士 大倉りえ

大阪事務所所長。
10年以上の経験を活かし、話しやすい雰囲気で丁寧にお話を伺い、納得の解決へ導きます。

登場人物
  • Bさん Bさん:
    子どもの将来が一番大事。養育費の「現実」が知りたい。
  • 弁護士 T弁護士:
    法律のプロ。養育費算定の「基準」と、万が一の「対処法」を解説する。

Q1. そもそも「養育費」って、どうやって決めるんですか?

Cさん

先生! 離婚を考える上で、一番心配なのが「養育費」です。子どもの親権者にならなかった側が、親権者になった側に支払う、子どもを育てるためのお金ですよね?

弁護士

はい、その通りです。養育費は、子どもの生活や教育のために必要なお金で、親権者にならなかった親も当然、支払う義務があります。

Cさん

金額は、どうやって決めるんですか? 交渉次第ですか?

弁護士

話し合いで合意できればそれが一番ですが、モメた場合、裁判所では「養育費の算定表」という基準表を使うのが一般的です。

Cさん

さんていひょう…?

弁護士

はい。お互い(父母)の収入と、子どもの年齢人数を、一覧表に当てはめて、標準的な金額(「月〇万~〇万円」という幅)を出すんです。基本的にはこの算定表を基準に、個別の事情を考慮して決められます。

Q2. 養育費って、いつまで(何歳まで)支払われるんですか?

Cさん

支払い期間は、やっぱり子どもが「成人するまで」ですか?

弁護士

実務的には「未成年者が20歳に達する日の属する月まで」とされることが多いです。(※民法改正で成人が18歳になりましたが、養育費の終期は「20歳まで」とされるのが一般的です)

Cさん

でも…今どき、大学に行ったら20歳を過ぎますよね?

弁護士

おっしゃる通り。もし子どもが大学進学を希望・予定していて、父母の学歴家庭環境資力(経済力)などを考慮して、「大学卒業まで支払うのが相当だ」と裁判所が判断すれば、「大学卒業まで(通常22歳になる年度の3月まで)」と決められる場合も多くあります。

Q3. 一度決めた養育費の金額って、後から変えられますか?

Cさん

一度決めた金額が、事情が変わって合わなくなることもありますよね? 例えば、支払う側の収入が大きく変動したり、受け取る側が病気で働けなくなったり、あるいは子どもの進学で予想外にお金がかかるとか…。

弁護士

はい、そうした事情の変更があれば、変更することができます。

Cさん

そうですか。ずっと一定というわけではないんですね。

弁護士

離婚しても、父母が子どもを扶養する義務(生活水準を保持させる義務)は続きます。収入の変動や、子どもの進学(高校から大学など)で予想外にお金がかかるようになった場合、扶養の性質上、変更が認められるのは当然のことなんです。

Cさん

どうやって変更するんですか?

弁護士

まずは父母間で話し合います。それがうまくいかなければ、家庭裁判所に「養育費増額(または減額)請求の調停申立て」をします。

Q4.もし支払う側が「無職」になったら、どうなる?

Cさん

もし支払う側が「仕事辞めたから無職だ。払えない」となったら…もう、受け取る側は請求できないんですか?

弁護士

これは、状況によりますね。
まず、病気やケガなど、「やむを得ない事情」で無職になり収入がない場合、養育費の請求は原則として難しくなります。

Cさん

もし…「働けるのに働かない」だけだったら?

弁護士

「働こうと思えば働けるのに、あえて働かないでいる」相手に対しては、裁判所が平均賃金などを参考に「これくらいは稼げるはずだ」と支払えるであろう養育費を"推計"することはあります。

Cさん

なるほど…。

弁護士

ただ…言葉は悪いですが、実際に働いていない(=お財布が空)わけですから、裁判所が「払え」と命じても、現実に支払ってもらうのは非常に難しいかもしれません。
ただし、働いていなくても「家賃収入」などの不労所得があったり、大きな財産(貯金や不動産)がある場合は、そこから養育費を請求できますよ。

Q5. 私立の学費や、塾の費用は?

Cさん

あの「算定表」の金額って、公立学校が基準ですよね? もし私立中学に行かせたいとか、塾に通わせたい場合、その費用はどうなりますか?

弁護士

基本的には、やはり「算定表」の金額が基準になります。
ですが、

  • 私立中学への進学や通塾について、夫婦間で合意していた
  • 父母の収入や学歴などから見て、私立進学が当然と考えられる

といった場合には、「算定表」の金額に、それらの費用が上乗せされることもあります。

Q6.もし「再婚」したら、養育費はどうなりますか?

Cさん

もし、離婚した後にどちらかが再婚したら、養育費の金額は変わりますか? 例えば、支払う側が再婚した場合とか、受け取る側が再婚した場合とか…。

弁護士

良い質問ですね。ケースによります。
まず、支払う側(義務者)が再婚しただけでは、すぐに養育費の支払い義務はなくなりません。ですが、その再婚相手との間に子どもが生まれたり、相手の連れ子と養子縁組したりして、扶養家族が増えた場合は、「支払いが厳しくなった」として、減額を求める調停を起こされる可能性はあります。

Cさん

では、受け取る側(親権者)が再婚した場合は?

弁護士

これも、再婚しただけでは、実の親(支払う側)の扶養義務はなくなりません。
ただし、Cさんのお子さんと、その受け取る側の再婚相手が「養子縁組」をした場合は、話が別です。

Cさん

ようしえんぐみ?

弁護士

はい。養子縁組をすると、法律上、第一次的な扶養義務者は「再婚相手(養親)」になります。
そのため、原則として、実の親(支払う側)の養育費の支払い義務はなくなるか、大幅に減額されることになります。

Q7. 決めたのに、養育費が支払われない場合は!?

Cさん

怖いのは不払いです。調停や裁判で決まったのに、支払うべき側が払わなくなったら、受け取る側はどうすればいいんですか?

弁護士

強制執行(きょうせいしっこう)」ができます。

Cさん

きょうせいしっこう!ものものしいですね。

弁護士

はい。特に相手が会社員で給料をもらっている場合、「給与の差押え」の手続きをすれば、相手の会社から天引きする形で、給料の一部を養育費に回すことができます。

Cさん

天引き!最強じゃないですか!

弁護士

ええ。養育費支払いのための給与差押えは非常に強力で、手取り給与額の「2分の1」まで差し押さえることが可能です。
だからこそ、離婚時に「公正証書」や「調停調書」など、強制執行ができる形の書類を残しておくことが重要なんです。

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  • 「算定表だと、いくらになる?」
  • 「大学の学費は、どう考慮される?」
  • 「不払いがあった時のために、何が必要?」

養育費は、お子様が成長するために不可欠な、大切な権利です。
離婚時の取り決めはもちろん、その後の不払いへの対策まで、法的な準備が非常に重要になります。

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