親権
親権者がもつ権利
親権者が持つ権利は主に以下のとおりです。
- 身上監護権
- 財産管理権
子どもの身の上を守る、子どもに教育を受けさせる、居所指定権(子どもの住む場所を決める)など
子どもの財産を管理する、法定代理権(子どもに代わって法律行為をする)など
親権を得るには現状維持・母親が有利?
親権者を指定するにあたって重要視されるのは、監護の継続性と子どもの安定性です。
裁判では
- 現状維持が有利
- 母親が有利
といわれています。
たとえば別居中の父母で、すでに母親が子どもを引き取っている場合は、この「現状維持」「母性優先」が重視され、母親が親権者になる可能性が高いです。
親権者は変更することができる
一度親権者を決めて離婚をした後も、親権者を変更することができます。親権者の変更をしたい場合は、家庭裁判所に調停または審判の申立てをします。
このとき考慮されるのは
- 子どもの健康面、経済面、環境面など
- 子どもに対する愛情
- 子どもの年齢、心身の状況など
- 子ども自身の意思(子どもが満15歳以上の場合)
などです。
子どもの姓(名字)
たとえば戸籍の筆頭者が父である場合、父母が離婚すると母はその戸籍から脱退します。親権者が母になったとしても、子どもは父の戸籍に残ったままですし、姓も父親の姓のままです。
母が離婚後3か月以内に、結婚中の姓を名乗りたいと届けを出せば、母は子どもと同じ姓を名乗れますが、子どもの戸籍は父の戸籍に残ったままです。
子どもを母と同じ姓にし、さらに母が自分の戸籍に子どもを入籍させるためには、子どもの親権者である母が家庭裁判所に「氏の変更許可の申立て」をします。
子どもを引き取れなかった親の権利義務
- 扶養義務・相続権
- 面会交流権
- 面会交流の内容や条件の決め方
- 相手が面会交流に応じなかった場合の処置
- 離婚前の別居中でも面会交流を求めることができる
- 面会交流の内容を変更することができる
- 親権者が亡くなった場合
- 親権者になれなくても子どもを引き取る方法がある
親権・監護権の有無に関係なく、父母は扶養義務・相続権を持ちます。
面会交流とは、子どもを引き取れなかった親が、子どもに会ったり、手紙のやりとりをしたりして交流をもつことです。この面会交流の内容について、父母間の話し合いによって決められなかった場合には、家庭裁判所に調停または審判の申立てをして決めてもらいます。法律的には、この面会交流権は、”円満な発達に不可欠な子どものための権利”という見解が一般的です。裁判所は子どもの福祉の面を最も重要視して、会う日時や場所等を決めます。裁判所に”親と会うことが子どもにとってよろしくない”と判断されれば、会うことを禁止する処分が出されることもあります。
面会交流は子どもにとって重要なものであるため、子どもの考えや事情は常に配慮すべきです。一般的には、面会交流の回数のみを決め、 その他具体的な内容(日時、場所、方法など)については都度父母の話し合いにより決めるという形が多いようです。子どもの時々の事情や年齢によって面会交流の内容についても変えていく必要があるからです。これは調停や審判でも同様です。
調停または審判で面会交流が認められたにもかかわらず、相手が子どもと会わせようとしない場合、家庭裁判所に履行の勧告(子どもに会わせなさいと命令すること)を求めることができます。
また、裁判所に、間接強制(相手が子どもと会わせなかったときに、相手にお金を支払わせる強制方法)の申立てができる場合もあります。
離婚前の別居中で、相手が子どもと一緒に生活している場合でも、面会交流の調停または審判の申立ては可能です。
父母の話し合いにより決めた面会交流の内容を、のちに変更することが可能です。ふたたび父母間で話し合いによって決めることもできますし、話し合いがうまくかないようなら家庭裁判所に調停または審判の申立てをします。家庭裁判所では、子どもの意思、子どもの生活に及ぼす影響などを考慮して、内容の変更を検討し結論を出します。
親権者となっていた父または母が死亡した場合、もう一方の母または父が自動的に親権者になることはありません。親権者の遺言または家庭裁判所の決定により未成年後見人が次の親権者がわりとなります。もう一方の母または父が次の親権者となることを希望した場合は、家庭裁判所に親権者変更の申立てをします。家庭裁判所は、子どもの利益を最重要視して、次の親権者を誰にするかを決定します。ただこの場合も子どもが15歳以上の場合は、子どもの意思が尊重されます。
一般的には、親権者となった父または母が子どもを引き取りすべての世話をすると思われがちです。通常は親権をもった親が子どもを養育しますが、親権者とは別に監護権者を定めて、監護権者が実際に子どもを養育するということも可能です。親権者と監護権者が別になった場合は、監護権者が身上監護権をもつことになります。
関連条文
(親権者)
成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
(離婚又は認知の場合の親権者)
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
4 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
5 第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。
(監護及び教育の権利義務)
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。